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最近読む本の10割が仕事本の中で、村上春樹の新作は別だ。
読むべき本を一通り制覇し、噛み砕き、自分の内部に取り入れたあと、ページをめくり始めた。

Book1、2を読んでからだいぶ時間が経ってしまったので、
記憶の隙間を埋めながら読むことになった。

600ページという膨大な量の割には、また村上春樹の他の著作よりもサクサク読めたのは、
ストーリーが極めてシンプルだったからだ。

ただ、ストーリーがシンプルであったとしても、
その背後にある村上春樹が描こうとしていたものは、どうだったのだろう。
難解だったのか、単純だったのか。

壮大なラブストーリーといえばそれまでだが、その物語、文脈、言葉の奥深くには
それ以外の要素も十分に感じることができる。

【1Q84】に限らず村上春樹の物語は
【世界は確かにそうなっているのかもしれない】という示唆を与えてくれることだ。

自分が存在するこの世界とは別にあるかもしれない世界
(言葉は陳腐だが、無意識下にある世界とも言い換えることができる)との
ひずみ、ゆがみをかいま見る。

その深く暗い深淵を覗きこむ作業が、
村上春樹の物語を読むということになるような気がしている。

Book3に関しては僕個人の感想で言えば、完全なエンターテイメントだ。
村上春樹独特の言い回しや描写、シークエンスは健在だが、
圧倒的にエンターテイメントだと思う。

それが良いのか、悪いのかは個々人の村上春樹に期待するものによって違うだろうけれども、
僕は今までにないくらい村上春樹の物語の中ではクリアな物語だった。

確かに物語の展開は予想できるし、大方その通りになる。
それが一体なんなのだろうか。
村上春樹に僕が期待しているのは前述したような
【世界は確かにそうなっているのかもしれない】という示唆を与えてくれることだ。

居心地の悪い、空気が肺に届ききれていないような不安定さ、不完全さ、違和感を
村上春樹の物語を通して この世界と村上春樹が描くような世界とのあいだにある
深く、暗い溝を恐れながら、見てしまうのだ。

それはひどく観念的で、不明瞭なものだ。

Book3では今までのそれとは違う。
正確にいえば、そうなのだが、今回は森の奥深く消えてしまうものではなく、
雲間のあいだから見える月のように、【見える】形だった。あくまで個人的には。

さて、果たしてBook4はあるのだろうか。
伏線うんぬんではなく、僕はこの【1Q84】に描ききれていない、
もしくは描いていないであろう物語を知りたいと思う。

それがどんな物語であれ、文章であれ、表現であれ、言い回しであれ、知りたいと思う。
それを感じさせてくれたBook3は僕の中では、嬉しい限りだった。

今日、月は見えない。
数はいくつだろう。
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by ground0803 | 2010-04-20 22:08 | 書籍