深い森へと迷い込んだ自分が帰る場所は、ここではない

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では、Radiohead最新アルバム『The King Of Limbs』のレビューを。

一言でいえば、素晴らしいアルバム。
3年半待った甲斐があった。

曲数はちょっと少なめの8曲。
でも、1曲1曲がものすごい完成度と複雑さで酩酊したような気分になる。
8曲で1曲のようなイメージで、壮大な組曲、物語といった印象だ。

1曲1曲がバラバラじゃなくて、流れるように、だけど、すごく強い音の数々が
脳内に降り注ぐといった感じ。

僕はこれを何度も何度も聴きながら、不思議な感覚に襲われた。
今いる自分の場所から、違う場所へ動いていく感覚。
まるでアリスが不思議の国へ迷い込んだように。
深い深い森の中に引き込まれて行く。

【track1:Bloom】
美しいピアノの調べから始まる曲。
何か大きな不透明で不正確な物語が始まるような予感。
数秒聴いた瞬間に、持ってかれた、心を。

すべてが正確で、心地いい音。
トム・ヨークの声が力強く儚く美しい。

無慈悲なようで、どこか暖かくもある始まりを告げる曲。
このアルバムの中でもとりわけ好きな曲。

【track2:Morning Mr Magpie】
Bloomにそのまま続くような第二章。
とにかくリズムが気持ちいい。
頭の中が溶けていくような錯覚を覚える。

目を閉じて、聴いていると、
ここではないどこかへ、自分自身の存在が移動してしまうようで
気持ちいいんだけど、少しだけ怖さも感じる。
そして、思う。もう動いてしまったんだと。
これはBloomでも同様の印象を感じた。

【track3:Litlte by Little】
Morning Mr Magpieで自分自身の存在がどこかへ移動してしまった僕は
とある広場に辿り着くと鳴っている音楽。

不思議の国のアリスでいえば、穴に落ちて辿り着いた変な生き物たちがいる場所。
生き物たちがワイワイ、ガヤガヤやっている。
正しいのか、正しくないのか、正常なのか、異常なのか。
そんな世界観を与えてくれる1曲。

【track4:Feral】
不思議な生き物たちが深い森の中で騒々しく騒いでいる。
アリスのように、白いウサギを探しながら次のステージへ。

ここではまた同じ世界観の中でありながら、毛色の違った世界が広がっている。
自分の足は後ろに戻ることも、立ち止まることもできない。
ただひたすら、前に進むだけだ。

流れてくる音の粒子が集まって、砕けて、廻って、鳴っている。
恐怖を感じながらも、更に足を進めるようなトランス感を与えてくれる曲。

【track5:Lotus Flower】
昨日、公開されたトム・ヨークのコンテンポラリーダンス
(一部では暗黒阿波踊りなんていわれてるけど)の1曲。

美しいけど、やはりどこか不気味さがスパイスとして入り込んでいるような
中毒性の高い楽曲。

深い深い森の中を歩きながら、思う。戻った方がいい。
不気味だけど、気になる、知りたくなる、でも、これ以上近づいてたらいけない。
さらに深い森の奥へと。

【track6:Codex】
美しく悲しいバラード。
家に帰りたい。帰りたいけど、帰り道がわからない。
どうしてこの世界に入ってしまったのだろう。

ピアノとトム・ヨークの声がキレイに世界を構築していく。
悲しさの中に優しさも織り交ぜながら。

【track7:Give Up The Ghost】
帰りたいのに、帰れない。
この森は深く長い。

でも、もしかしたら帰れるかもしれない。
と、不思議な生き物が教えてくれた。

「帰り道はあるよ、たぶん、ね」

これは昨年のフジロックでもトム・ヨークが披露した曲。
ひとりで奏でるトム・ヨークも素晴らしく美しかった。


【track8:Separator】
自分がいる世界に、自分がいる日常に帰る為に。
音は確かに聴こえている。
深い森へと迷い込んだ自分が帰る場所は、ここではない。

立ち止まることも、後戻りすることも、今はできる。
でも、しない。前へ歩き続ける。
後ろから背中を押してくれるような、優しさと力強さに満ちた曲。

こうやって全曲を聴いてみると、やはり一貫した物語性を感じる。
と僕は勝手に思っている。あくまで勝手にだ。余計なお世話というやつだ。

ただタイトルにもなっている『The King Of Limbs』
どこかそういう印象を感じてしまった自分がいる。

とにもかくにも、傑作のアルバムの誕生である。
あとは是非。日本へ!
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by ground0803 | 2011-02-19 19:36 | 音楽